🟧【現場改善の境界線】「マッサージチェアの追加」は正解か?40〜60代が活躍する食品工場で起きた、「対症療法」から「根本改善」への挑戦
「従業員の高齢化が進み、立ち作業による疲労で新規採用者の定着率が上がらない……」 「福利厚生を充実させているつもりなのに、現場の疲労感が一向に抜けない……」
多くの食品工場で抱えるこの悩みの背景には、目に見えにくい「作業環境と身体のミスマッチ」が隠れています。
休憩室のマッサージチェアに行列ができる工場
以前訪問したのは、従業員数約45名の食品加工工場。現場を支える主力メンバーは40〜60代の女性スタッフたちです。
休憩室には福利厚生として3台のマッサージチェアが設置されており、1人1回10分のルールで運用されています。ラインごとに休憩時間をずらしているにもかかわらず、昼休みには常に順番待ちの行列ができていました。
「10分じゃ足のパンパンが取れないのよね」 「作業が終わる頃には腰が限界で……」
スタッフに声をかけると、足の疲労や腰の痛みへの切実な訴えが返ってきました。工場全体に、どこか重苦しい慢性的な疲労感が漂っていたのです。
「対症療法」では根本は解決しない
工場長に話を伺うと、こんな状況が見えてきました。
「ここ数年で従業員の平均年齢が一気に上がりました。交代要員を確保したくても求人に応募が来ない。若い人を採用しても、立ち作業のハードさですぐに辞めてしまうのが現状です」
工場長は今期の予算で、マッサージチェアをもう1台追加購入(約30〜50万円)することを検討していました。しかし、ここに落とし穴があります。
マッサージチェアの増設は、溜まった疲労を一時的にほぐす「対症療法」に過ぎません。休憩時間に10分マッサージを受けても、午後の作業で再び同じ負担がかかる環境に戻るなら、疲労の根本原因は何も変わらないのです。
必要なのは「疲れた体をどう癒やすか(出口対策)」ではなく、「いかに疲れさせないか(入口対策)」という視点の転換でした。
現場に入って気づいた「作業台の高さ」と「足元」の問題
実際に現場のラインを観察すると、すぐに違和感に気づきました。作業内容が異なるのに、作業台の高さがすべて同じだったのです。
前処理ライン(包丁で食材を切る力仕事)と検品ライン(手元で不良品を確認する細かな作業)で、まったく同じ高さの台が使われていました。工場立ち上げ時の設備を、特に疑うこともなく使い続けていたとのことです。
作業内容によって、身体に負担をかけない「最適な作業面の高さ」は変わります。
- 前処理作業(力を入れる作業):肘の高さ − 10〜15cm
- 検品作業(手元中心の精密作業):肘の高さ − 5〜10cm
同じ高さの台を使い続けた結果、小柄な方は肩をすくめて包丁を握り、大柄な方は猫背になって腰をかがめながら作業をしていました。毎日の積み重ねが、じわじわと体の歪みと疲労につながっていたのです。
さらに足元を見ると、検品エリアには疲労軽減マットが敷かれていたものの、ウェット環境の前処理エリアには何もなく、冷たく硬いコンクリート床の衝撃がそのまま足腰に伝わっていました。
マッサージチェア1台分の予算を、根本改善へ
「マッサージチェアを1台増やす予算があるなら、全員の作業環境を変えることに使いませんか?」
工場長へ、マッサージチェアの購入を見直し、作業環境を改善する具体策を提案しました。
- 作業高の再設計 各工程に従事するスタッフの平均身長を計測し、前処理・検品・箱詰め・ミキサー投入口など、それぞれの作業内容に合わせて高さを最適化。
- 疲労軽減ツールの導入
- 前処理(ウェット環境):防水対応マット + 足台 + インソール
- 検品作業:マット + 足台 + インソール
- 移動の多い作業者:マット + インソール
この改善にかかったコストは、初期投資で約80万円、年間ランニングコストで約10万円。検討していたマッサージチェア1台(30〜50万円)と比べると初期費用は上回りますが、現場で起きた変化はコスト以上のものでした。
「体がラクになった」という声と、行列が少なくなった休憩室
導入後、現場からは「夕方になっても足のしびれや腰の痛みが残らなくなった」「作業がとにかくラクになった」という声が届きました。昼休みにマッサージチェアへ殺到していた行列も自然と解消され、リラックスして過ごす人が増えました。
また、姿勢が安定したことで集中力が維持され、検品ラインでの見落としや微小停止も減少。ライン全体の稼働状況も向上しました。
先日、工場長から連絡をいただきました。 「従業員から『自分たちの体のことをここまで考えて改善してくれてありがとう』と直接言われました。マッサージチェアを1台増やすより、毎日の作業姿勢に向き合ってくれたことが嬉しかったようです」
「疲れを癒やす」から「疲れさせない」現場へ
従業員からの「腰が痛い」「マッサージチェアを増やしてほしい」という声は、現場からの切実なサインです。しかしその声にそのまま応えて機器を買い足すだけでは、本質的な課題解決にはなりません。
- 工場立ち上げ時の作業台の高さを、そのまま使い続けていないか?
- 作業者の体格や作業内容に応じた調整ができているか?
- 疲労の「出口(休憩室)」ばかりに目が向き、「入口(作業現場)」の負担を放置していないか?
経営が厳しくなると、つい「数字を改善するために現場を締める」方向に意識が向きがちです。しかし今回の事例が示しているのは、その逆です。現場で働く人のしわを伸ばすことが、生産性や定着率というかたちで会社を伸ばす原動力になる。「疲れにくい環境をつくること」は、単なる安全衛生対策ではなく、人への投資であり、経営への投資です。
まずは明日、現場に立ち、作業台の環境やスタッフの作業姿勢を観察することから始めてみませんか?
自社の「現場改善」に、どこから手をつけるべきか迷っていませんか?
「現場の疲労感や離職率を下げたいが、何から変えればいいかわからない」 「作業環境を客観的な視点でチェックしてほしい」
そうした課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。Co-Creation Studioは、現場に直接入り込み、課題の発見から改善の定着まで共に考えるパートナーです。
まずは無料相談フォームより、お気軽にお声がけください。
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