【食品業界レポート Vol.5】値上げはピーク越え。ただし、コスト負担は続く

2026年10月16日|Co-CreationStudio


前号(Vol.4)から2週間。食品の値上げラッシュには一服感が出てきましたが、原油は100ドル台で高止まりしています。

今号で見たいのは、「値上げが減ること」と「コスト負担が軽くなること」は別の話だということです。


1.値上げは「ピーク越え」。ただしコストは元に戻らない

帝国データバンクによると、9月の食品値上げは4,965品目と2026年最多でした。10月は3,153品目・平均10%で、同社も値上げラッシュはピークを越えたと見ています。2026年の年間値上げは、1〜12月の判明分で20,187品目となりました。

11月も1,469品目の値上げが判明しています。前年同月の約10倍ですが、9〜10月に比べると大幅に減少する見込みです。

値上げの動きが落ち着いても、すでに上がった仕入価格や人件費が元に戻るわけではありません。価格改定後に必要な利益を確保できているか、改めて確認する必要があります。


2.原油は100ドル台で高止まり。海上運賃は一服後に小反発

前号では、原油価格が一時落ち着いたことを紹介しました。しかし、その後も中東情勢による供給不安が続き、Brent原油は10月15日に1バレル105.92ドルで取引を終えました。100ドル台での高止まりが続いています。

一方、海上運賃は小反発しています。Drewryの世界コンテナ運賃指数は10月15日に4,485ドル/40フィートコンテナとなり、前週比3%上昇しました。ただし、3週連続の下落後の小幅な反発であり、継続的な上昇局面に入ったと判断するのは早い段階です。

食品メーカーで確認したいのは、原油そのものよりも、フィルム・トレーなどの包材、配送費、冷凍・冷蔵の電力コストです。

原油の動きは、ナフサ・運賃・電力にそれぞれ時間差で、別の形で反映されます。契約の改定時期と条件を、品目ごとに見ておきたいところです。


3.原材料の相場は、一様ではない

小麦は10月期から政府売渡価格が12.0%引き上げられ、70,020円/トンとなりました。

一方、米は下落が続いています。農林水産省が10月9日に公表した、9月28日〜10月4日の週のスーパー平均販売価格は、5kg当たり2,860円。前週から66円下落しました。ただし、店頭価格の下落が、そのまま業務用米の仕入価格に反映されるわけではありません。

畜肉も一様ではありません。ALICの10月需給予測では、牛肉は国内生産・輸入ともに前年を下回る見通しです。一方、豚肉には冷凍輸入の増加、鶏肉には在庫増加という緩和材料があります。

油脂では、USDAの10月の需給見通しで、インドネシアのパーム油生産予測が下方修正されました。油脂全体の値上がりを意味するものではありませんが、今後の調達で注目したい材料です。

同じ食品メーカーでも、使用する原料の組み合わせによって、商品ごとの原価の動きは大きく異なります。


食品メーカー相場ウォッチ

項目現状・前号からの変化3〜6か月重要度
米下落継続→~↓★★★★
小麦10月期+12.0%適用→~↑★★★★★
牛肉供給懸念継続↑★★★★★
豚肉冷凍輸入増・国内生産減→★★★
鶏肉在庫増の一方、生産・輸入は減→★★★
油脂パーム油に上昇リスク↕★★★★
包材高止まり継続→~↑★★★★★
原油・エネルギー100ドル台で高止まり↕★★★★★
海上運賃一服後に小反発↕★★★

※重要度は中小食品メーカーが確認する優先度です。★★★★★=特に注意、★★★★=継続注意、★★★=通常監視。方向性・重要度はCo-CreationStudioによる分析であり、確定価格ではありません。

※見通しは2026年10月16日朝までに確認できた公開情報に基づきます。畜肉の需給予測は、市場価格の騰落を直接示すものではありません。


商品開発ウォッチ:原料が使えないなら、組み立て直す

カゴメが10月6日に発売した「Beyond グレープフルーツを使っていないグレープフルーツ味の100%ジュース」が注目されています。

背景は原料事情です。グレープフルーツ果汁は、直近10年で輸入価格が約2倍になり、輸入量も急減しています。カゴメは、にんじん、ほうれん草、プチヴェール、ぶどう、レモンなどをブレンドし、グレープフルーツ果汁を使わずにその味わいを再現しました。50回を超える試作を重ねたとのことです。

注目したいのは、これが野菜・果実ミックスジュースで長年培ってきたブレンドの知見の応用だという点です。新しい技術を一から開発したというより、自社が持つ知見を、原料が手に入りにくくなった状況に合わせて組み直した事例といえます。

中小食品メーカーにも置き換えられます。原料が高騰したり調達しにくくなったりしたとき、同じ原料を探し続ける以外にも、配合を組み直す、加工条件を変える、原料メーカーの技術を借りる、別の商品に使っていた設備を応用する、といった選択肢があります。

ただし、配合や原料を変えるときは、味だけでなく、原材料表示、規格書、アレルゲン、原価、量産時の再現性もあわせて確認する必要があります。試作でおいしくできたことと、工場で安定して作れることは別の問題です。

また、商品名に「グレープフルーツを使っていない」と明記している点も興味深いところです。原料の代替を隠すのではなく、商品の特徴として伝える発想は、商品開発だけでなく販売方法を考えるうえでも参考になります。


制度ウォッチ:食品表示基準、10月1日改正

10月1日、食品表示基準の一部が改正され、同日に施行されました。主な内容は、栄養機能食品に関係する別表第11の基準の見直しです。

栄養成分の下限値・上限値、機能に関する表示文言、摂取上の注意事項などが対象となっています。

経過措置は2030年3月31日まで設けられています。ただし、対象となる食品や製造・販売の時期によって適用条件が異なるため、栄養機能食品を扱う事業者は改正内容を確認しておきたいところです。

一方、表示改版の計画に関わる継続課題として、4月1日施行の改正もあります。

カシューナッツが義務表示の対象となる特定原材料に追加され、経過措置は2028年3月31日までです。また、個別品目ごとの表示ルールも一部見直され、こちらの経過措置は2030年3月31日までとなっています。

対象となる商品では、原料変更や包材の版替えのタイミングで、改正内容との整合性を確認しておきたいところです。


Co-CreationStudioの視点

値上げの動きが落ち着いても、食品メーカーの利益がそのまま改善するわけではありません。小麦、牛肉、包材、物流など、依然としてコスト負担の大きい項目があるからです。

一方で、米のように相場が下がる原料もあります。ただし、相場の変化が実際の仕入価格へ反映される時期は、契約条件や在庫によって異なります。

利益の動きは、自社がどの原料・包材を、どの条件で買っているかで商品ごとに変わります。

相場そのものは動かせませんが、仕入条件、配合、工程、そして原料の組み立て方は動かせます。

まずは、主力商品の1個・1ケースあたりの利益が、この半年で何円動いたかを確認しておきたいところです。

次号も、相場と現場をつなぐ視点でお届けします。


Co-CreationStudio|食品業界レポート Vol.5|2026年10月16日

※本記事は2026年10月16日朝までに確認できた公開情報に基づく分析です。実際の仕入価格は産地、規格、契約時期、為替、物流条件等によって異なります。

参考:帝国データバンク、農林水産省、農畜産業振興機構(ALIC)、USDA、Drewry、消費者庁、カゴメ、各社報道の公表情報を基に作成。

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