🟧【現場改善の境界線】タイプは違っても、強い工場には「現場を守る工場長」がいる
これまで食品メーカーの現場を見てきた中で、今でも印象に残っている二人の工場長がいます。
一人は、とにかく明るく元気な工場長。現場を歩けば従業員に声をかけ、自然と会話が生まれる。現場から出てきた声を拾い、「これはやった方がいい」と思えばすぐに動く。現場からの信頼も厚く、新しいことに取り組むときの反応も早い工場でした。
もう一人は、まったく逆のタイプです。寡黙で、決してコミュニケーションが得意な方ではありません。でも、誰よりも現場を知っている。トラブルが起きれば自分で現場に入り、機械や作業を確認する。工場の中で一番作業着が汚れているのが工場長だったかもしれません。多くを語らなくても、「あの人は現場のことを分かっている」という信頼がありました。
二人は性格も仕事の仕方もまったく違います。それでも私は、どちらも素晴らしい工場長だと思っています。
二人に共通していたのは、「現場第一」だったこと
共通していたのは、明るさでも話し上手であることでもありません。自分の立場ではなく、工場そのものを大切にしていたことです。
人員、設備、生産量、品質、従業員の負荷。現場で何が起きているのかを見ながら、工場全体を考えていました。
だからこそ、時には経営者と意見がぶつかることもあります。「それを今やるのは難しいです」「この条件では現場が回りません」——そんな意見を伝えることもある。でも、それは単に反対しているわけではありません。現場を一番近くで見ている立場として、品質や生産、そこで働く人を守りながら、工場をより良くしようとしているのです。
良い工場長とは「経営者の言うことを何でもそのまま実行する人」ではないと思っています。経営の視点と現場の視点がぶつかりながらも、より良い形を探していける会社には、独特の強さがあります。
良い工場長がいる会社には、現場力がある
こうした工場長がいる会社を訪問すると、現場にも強さを感じます。従業員が自分の仕事をよく分かっている。トラブルが起きたときの対応が早い。日々の中で、小さな工夫が積み重なっている。
そして、こういう会社では、商品を支える製造へのこだわりや、現場ならではの工夫を感じることも多くあります。
ただ、ここで一つ大事なことがあります。現場力があることと、改善方法を知っていることは、必ずしも同じではありません。
食品工場は、意外なほど「他社を知らない」
食品メーカーは、他社の工場を見る機会がそれほど多くありません。衛生管理や企業秘密の問題もあり、競合企業の現場へ気軽に入れるわけではないからです。
そのため、自社では当たり前だと思っていることが、他社ではまったく違うことがあります。同じような機械を使っていても、使い方が違う。人の配置が違う。ラインのつなぎ方が違う。
もちろん、工場の広さや設備、生産量が違う以上、他社の方法をそのまま持ってくればよいわけではありません。ただ「こんなやり方もある」という選択肢を知るだけで、見え方が変わることがあります。大がかりな設備投資をしなくても、少し手を入れるだけで流れが変わることもあります。
「現場を回しながら改善する」は、思っている以上に難しい
工場長には、毎日の仕事があります。生産を止めない、人を配置する、品質トラブルに対応する、急な欠勤にも対応する——その中で「もっと良い方法はないか」と工場全体を冷静に見直すことは、簡単ではありません。
これは能力の問題ではありません。毎日その現場の中にいるからこそ、見えなくなるものもあるのです。長く続けてきた作業ほど「昔からこうしている」という前提になりやすい。外から見ると小さな違和感でも、中にいる人にとっては完全に「日常」になっていることがあります。
また、社内の営業や開発、経営者から「ここはこうした方がいい」と言われても、現場側からすれば「現場のことを分かっていないのに」となることもある。誰かが悪いという話ではなく、見ている場所が違うのです。
そんなとき、社内の上下関係から少し離れた第三者が入ると、話が進みやすくなることがあります。
もちろん、第三者だから正しいわけではありません。ただ、**「他の工場ではこんな方法もある」「なぜこの工程は必要なのか」**と、社内の立場から離れて問い直すことで、今まで当たり前だったことを見直すきっかけになります。
改善で一番避けたいのは、「今の仕事+新しい仕事」
現場改善をするとき、私が特に気をつけていることがあります。それは、改善案を出した結果、今やっている仕事に新しい仕事が追加されてしまうことです。
改善というと「新しいチェックを追加しましょう」「この記録も取りましょう」となりがちです。でも本当に考えなければいけないのは、「これもやってください」ではなく「今やっているこれをやめて、こちらに変えませんか」というところまでです。
現場の負荷を増やさずに、仕事の流れそのものを組み替える。そのためには、人員や設備、動線、生産量、品質条件まで見なければなりません。正しい改善策を知っているだけでは足りない。その工場で実行できる形に変えることが重要です。
良い現場がある会社だからこそ、もっと良くできる
最初に紹介した二人の工場長は、スタイルはまったく違いました。でも共通していたのは「自分のためではなく、工場のために動いている」ということでした。
こういう工場長がいて、現場にも力がある。それなのに、生産性が上がらない、人手不足で現場の負担が減らない、改善したくても手をつけられない——そんな会社を見ると、非常にもったいないと感じます。
現場力がないのではなく、今ある現場力を十分に生かし切れていないだけかもしれないからです。
「一度、別の工場も見てきた人間に現場を見てもらいたい」「今の現場のどこを変えれば無理なく良くなるか一緒に考えてほしい」——そうした課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。
Co-Creation Studioでは、外から正解を押し付けるのではなく、実際の工場を見ながら、今ある現場力をどう生かせるかを一緒に考えていきます。
まずは無料相談フォームより、お気軽にお声がけください。

