🟧【品質改善の境界線】異物混入が減らない本当の理由と、現場が自ら動き出した日
「徹底的な対策をしているはずなのに、なぜかゼロにならない……」
X線検出器を導入した。ポケットのない作業服に切り替えた。毎朝の朝礼で注意喚起もしている。それでも、異物混入のお申し出は減らない。
食品工場の現場責任者なら、一度はこの壁にぶつかったことがあるはずです。実は、食品の品質クレームのうち40〜50%を異物混入が占めることも珍しくありません。今回は、そんな壁を「意外なアプローチ」で突破した、ある鶏肉加工工場の改善事例をご紹介します。
月3件のお申し出。原因は「設備」ではなかった
その工場では、月間約40〜50万個の鶏肉加工品を製造していました。月平均3件(発生率:約6PPM)のお申し出が続いており、その半数以上が鶏肉由来の骨や硬い軟骨による異物混入でした。
前処理での検品強化、X線検出器の導入——これらの対策でお申し出は10〜15%ほど減ったものの、根本的な解決には至りませんでした。マニュアル通りのチェックも、丁寧な作業もできている。では、なぜ減らないのか。
現場に入り、徹底的な混入ルートの検証が始まりました。
ベテランの「指先」に、答えがあった
現場を観察してわかったこと。それは「見分け方と取り除き方が、人によって全く違っていた」ということでした。
あるベテラン作業員の方に目が留まりました。他の作業員と比べ、1時間あたりに取り除く骨の量が明らかに多い。その違いはどこにあるのか。
他の人が「目視」を中心に確認していたのに対し、そのベテランの方は「指先で触る(触手)」ことで、肉の中に埋もれた微細な骨を瞬時に検知していたのです。まさに、機械では代替できない「現場の職人技」でした。
「注意する仕組み」から「評価される仕組み」へ
発見をもとに、工場では2つの取り組みを同時に実施しました。
- 技の言語化と指導時間の確保:ベテランの「指での確かめ方」をマニュアルに落とし込み、他の作業員への直接指導を設定。指導者には指導手当を支給しました。
- 「除去物1個=10円」のインセンティブ設計:取り除いた骨1つにつき、責任者確認のもとでインセンティブを給与に還元。「注意しなさい」と叱られる仕組みから、「見つければ見つけるほど評価される」仕組みへと180度転換しました。
現場のモチベーションは一気に変わりました。
データで仕入れ先を「パートナー」に変える
同時に行ったのが「データの見える化」です。集まった除去物をもとに、どの仕入れ先の原料に骨が多いかを日付・ロットごとに統計化。感情的なクレームではなく、客観的なデータとして仕入れ先にフィードバックしました。
すると、意外な事実が見えてきました。「食鳥処理場で研修生が入れ替わる時期に、軟骨の混入が急増する」——仕入れ先も自社の課題に気づき、処理場まで遡って改善を徹底してくれるようになったのです。一方的なクレームではなく、データをもとに品質を一緒に上げていくパートナーとしての関係が生まれました。
半年で異物混入が半減。そして現場が自ら動き出した
2つのアプローチを実施した結果、前年同時期に約10件発生していた異物混入が、わずか半年で4件にまで激減しました。
ここで重要なのが、コストの話です。「インセンティブを導入した分、コストが増えただけでは?」と思われるかもしれません。しかし実態は逆でした。1件のクレーム対応には、対応人件費・送料・原因究明コストを合わせると最低3,000〜5,000円が発生します。月6件の削減だけで、年間換算では数十万円規模の対応コストが丸ごと消えた計算になります。インセンティブにかかった費用を差し引いても、工場全体としては明確にプラスです。品質が上がり、余計なコストが減り、現場のモチベーションも上がる——三方よしの改善でした。
さらに予想外の波及効果が生まれます。他のラインでも「異常に気づいて報告(ヒヤリハット)」をインセンティブの対象にしたところ、作業員から自発的な報告が次々と上がるようになったのです。
「ベルトコンベアのフチに糸のほつれがあります」「モールド板が摩耗して削れそうです」——事故が起きてから対処するのではなく、未然に防ぐ風土が現場に根付き始めました。
現場のポテンシャルこそ、最大の改善資産
今回の改善で最も大きかったのは、インセンティブのお金そのものではありません。「現場が声を上げやすく、正当に評価される体制ができたこと」でした。
最新設備にも負けない技術やヒントは、毎日現場で「働く人の中」に埋もれています。ルールを増やすだけでは、本当の品質改善は動き出しません。
「対策を打っても異物混入が減らない」と感じているなら、一度、考え方と仕組みの見直しから始めてみませんか?Co-Creation Studioは、現場に入り込み、ともに改善の糸口を見つける共創パートナーです。
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