【食品業界レポート Vol.3】米は在庫回復、小麦・包材は上昇警戒

2026年9月15日|Co-CreationStudio


前回に続き、食品業界の動きから中小食品メーカーの経営・現場に関わる情報を厳選してお届けします。

今号のポイントは、

「原材料価格だけでは、食品原価を判断できなくなっている」

ことです。


1.米は「不足」から在庫回復へ

農林水産省によると、2026年7月末の米の民間在庫は162万トン。前年より70万トン増えました。

一方、販売数量は前年を下回っています。需給面では価格を抑える材料が増えていますが、中食・外食向け販売価格は7月時点でも前年を12.6%上回っています。

つまり、在庫が増えた=すぐ安くなる、とは限りません。 高値で仕入れた在庫の消化などもあり、実際の仕入価格へ反映されるまでには時間差があります。

加えて、下支え材料も出てきています。鈴木農相は9月1日、2025年に放出した備蓄米について21万トンを9月中に買い戻すと正式に表明しました。当初想定されていた15万トンから積み増しされた形です。集荷業者から随意契約で買い戻す方針で、民間在庫が多いことによる米価下落を一定程度下支えする狙いがあります。

さらに8月末には、収穫を目前にした北陸(石川・富山・福井)で記録的な大雨があり、田んぼの冠水被害が相次ぎました。米どころでの収穫直前の被害は、新米の供給に影響する可能性があります。

在庫水準だけを見て「米は下がる」と判断するのは早計です。買戻しの動向と、収穫期の天候被害。この2つも合わせて見ておきたいところです。


2.秋の小麦価格は上昇を警戒

現在の輸入小麦政府売渡価格は62,520円/t。9月9日、農林水産省は10月期の価格を**主要5銘柄加重平均で70,020円/t、前期比+12.0%**に引き上げると正式発表しました。2期連続の引き上げで、3年半ぶりの7万円台です。

要因は、米国の干ばつによる作柄悪化とロシア・ウクライナ情勢による供給不安、円安の進行、さらにホルムズ海峡を巡る混乱による海上運賃の高騰が重なったことです。

Co-CreationStudioの見立てとの答え合わせ:前号では「5〜8%程度の上昇」を中心シナリオとしていましたが、実際は12.0%と、想定を上回る上げ幅になりました。円安と海上物流コストの上昇が、見立て以上に効いた形です。次号以降も、シナリオが外れた場合は率直にお伝えしていきます。

パンや麺だけでなく、菓子、冷凍食品、揚げ物、ルウ、ソースなど幅広い商品に影響します。重要なのは、

「小麦が12%上がったとき、自社の商品原価が何円変わるか」

を把握しておくことです。


3.今、一番注意したいのは包材・物流

8月末から9月にかけて、Brent原油は90ドル台で推移しています。中東情勢とホルムズ海峡を巡るリスクが続いており、円相場も1ドル160円前後という円安水準です。

さらに9月10日、事態が一段悪化しました。サウジアラビア国内を東西に貫く原油パイプライン(全長1,200km、輸送能力は日量最大700万バレル)がドローン攻撃を受け、翌11日にサウジ政府が予防措置として稼働を停止。当局者によると、主要ポンプ施設の損傷もあり、復旧には3〜5週間かかる見通しです。

このパイプラインは、イランによる事実上の封鎖が続くホルムズ海峡の代替ルートとして重要性を増していたものです。加えて、イエメンのフーシ派が紅海沿岸の要衝を新たに掌握したとも報じられており、こちらも別の輸送路(バブエルマンデブ海峡)への懸念材料になっています。日本経済新聞はこの状況を「第2のホルムズ海峡危機」と表現しています。

つまり、原油の輸送ルートがホルムズ海峡・東西パイプラインの両方で不安定化している状態です。原油価格の先行きは一段と読みにくくなっており、原油高が長期化するリスクは、9月1日時点で見ていたよりも高まっていると見ています。

食品メーカーへの影響は、

原油 → ナフサ → フィルム・トレー・容器

だけではありません。燃料、物流、工場エネルギー、輸入原料にも波及します。

原材料より包材や物流の値上がりが利益を圧迫していないか、一度確認しておきたい局面です。


食品メーカー相場ウォッチ

項目現状3〜6か月重要度主因
米在庫回復・買戻し21万トン確定→~↓★★★★★在庫・新米・買戻し
小麦10月期+12.0%確定↑★★★★★為替・海上運賃・作柄
とうもろこし要監視→~↑★★★★米国作柄・飼料
大豆要監視→~↑★★★作柄・油脂需要
牛肉供給タイト↑★★★★★米国・国内生産減
豚肉高値圏→~↑★★★★国内生産・飼料
鶏肉比較的安定→~↑★★★★代替需要・HPAI
油脂不安定↑★★★★原油・大豆・パーム
乳原料比較的安定→★★★世界供給は比較的安定
糖類変動大↕~↑★★★★インド・天候
水産魚種差大↕★★★★漁獲・海水温・円安
カカオ高値・不安定↕~↑★★★★★コートジボワール天候
コーヒー高値圏↑★★★★★天候・供給・円安
果汁・農産加工品高値圧力↑★★★★病害・気候・円安
包材上昇圧力↑★★★★★原油・ナフサ・円安
物流・エネルギー高値・不安定↑★★★★★中東・ホルムズ・サウジ配管攻撃

※公開情報を基にしたCo-CreationStudioの方向性判断であり、将来価格を保証するものではありません。

畜肉は「牛高」だけでなく代替需要を見る:牛肉の供給タイトは、豚肉・鶏肉への需要シフトを伴います。鶏肉は比較的安定していますが、HPAI発生時の急変動には引き続き注意が必要です。


明るい材料もひとつ:食料品消費税、引き下げ方針

上昇材料が続く中、需要側では前向きな動きもあります。2026年8月5日、食料品の消費税率を2027年4月から2年間、現行8%から1%へ引き下げる基本方針が閣議決定されました。

法案成立が前提で、開始も1年半以上先ですが、実現すれば消費者の食品購入意欲を下支えする材料になります。原価上昇局面が続く今、値上げの是非を判断する際の材料として頭の片隅に置いておきたい動きです。


9月1日から機能性表示食品の新ルール

2026年9月1日以降に製造される機能性表示食品では、表示方法の変更や、錠剤・カプセル剤等へのGMP基準適用が始まっています。

直接対象にならない食品メーカーでも、品質管理が「完成品の検査」から「製造工程と記録の管理」へ進んでいるという制度の方向性には注目したいところです。


Co-CreationStudioの視点

米の在庫が増えれば米価は下がるかもしれません。小麦や原油も、今後下落する局面はあるでしょう。

しかし、原料↓・為替↑・包材↑・物流↑・人件費↑が重なれば、商品原価は下がりません。だから見るべきなのは、**「原材料が何%動いたか」ではなく、「商品1個・1ケースの利益が何円変わったか」**です。

外部相場を正確に当てることより、相場が動いたとき、自社の商品利益への影響をすぐ把握できることの方が、食品メーカーの経営には重要です。原料・包材・物流・エネルギー・人件費を個別に見るのではなく、最終的に商品単位の利益へつなげて考えること。それが、値上げ、商品改廃、調達変更、生産改善を判断するための土台になります。

次回も、相場と現場をつなぐ視点でお届けします。


Co-CreationStudio|食品業界レポート Vol.3|2026年9月15日

※本記事は2026年9月15日時点の公開情報に基づく分析です。実際の仕入価格は産地、規格、契約時期、為替、物流条件等によって異なります。 参考:農林水産省、USDA、帝国データバンク、消費者庁の各公表情報を基に作成。

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